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mishima

大学の剣道部の師範は、三島由紀夫に剣道を教えた人でした。

合宿になると、お茶当番と言うのがあって、必ず顧問と師範の前に正座で座り顔をつき合わせてご飯を食べつつ、彼らのお茶がなくなる前に茶を注ぐという係だった。
お茶当番という仕事自体は嫌ではないのだけれど、顧問は話しはじめると長いし、師範は警察剣道の四天王と言われた仁王像が動いてるようなお爺さんで、高校卒業したて(嘘、一浪だったわっ 笑)の話題の乏しいひよっ子には荷の重い相手であり。
いつも武者震いで挑んでました(笑)

その時、三島由紀夫の話を聞いたのです。

三島君が篭城した時は、一日心配で心配でテレビから目が離せなかった。
と言ってました。
私が4歳の時の話。
「あさま山荘事件」のヘリコプターと突入シーンが私の最初のニュースの記憶で、その前は覚えてないのですよね・・・見てたのだろうな、私も。

師範はいつも、「三島君は面白い人間だった。酒を酌み交わすとあれほど楽しい奴はいなかった。だけど剣道は下手だった」と締めくくって。
私のイメージの中の「美と信義を巡る潔癖な完全主義者三島由紀夫」に「剣道は下手」が加わってしまったわけですが・・・。

あまりに上の人過ぎて、滅多に話す機会もなかったので、今考えるとお茶当番は、師範の生きてきた世界に触れる貴重な瞬間だったのですねぇ。
今でも、あの時の師範の話しっぷりが、目と耳に焼きついてます。


大学を卒業したての新入社員の時、またこんな感じの荷の重い仕事が回ってきた。
なんとっ!ですが。
「待ってる間、緒形 拳さんの話し相手をやれ」という仕事。

何で私なんですか?と聞いたら、「拳さんは、若者にとても優しい」からという理由であった。
駆け出しの、若手の役者にとても優しいんだそうで。
って、私は役者じゃなく、単に若いだけです~(涙)

で。
「mishima」の撮影の話しをしたんです。
当然のことながら、「わ、私の剣道の師範が三島由紀夫に剣道を教えたんです!」
と言えたおかげで、すごく色んな話をしてくれました。
「剣道は下手だったそうです」と言ったら、拳さんから笑いも取れたので私的に満足で(笑)

アメリカで撮影された日本未公開、海外で絶賛されたというこの映画で、緒形拳さんの役は三島由紀夫。
最後の切腹のシーンに、あまりに気を込めすぎて、どうしても演技の途中で失神してしまい、そうすると、その日はもう撮影はできないから、また翌日、そのまた翌日って何度も撮りなおしになってしまってねえと、言っていました。
監督にもスタッフにも、クレイジーと言われたのだ可笑しそうに笑ってました。

この時初めて、役者ってすごいと思いました。
役に入り込むって、こういうことなんですね。
役になり切って、失神してしまうなんて、人間の思念はそれほど強いものなんですねえ。
でも役を離れると、本当に穏かな優しい方で。
今まで色々感動する人物に会いましたが、緒形さんもその一人でした。

「mishima」いつか見てみたいです。


お亡くなりになったことを知って、朝からショックを受けてい。
ご冥福をお祈りします。



by africajp | 2008-10-07 13:24 | 母のつぶやき

スペインから引っ越してきました。


by africajp